オプション取引とブラック・ショールズモデルの誕生

オプション取引とブラック・ショールズモデルの誕生

オプションやその他の金融派生商品は、多くの投資家にとって非常に魅力的な取引手段ですが、FXや株式などの金融商品とは趣の異なる部分が多くあります。

異なる世界を垣間見るにあたり、その歴史的背景について知っておくことは有益なはずです。ギリシャ文字やブラックショールズに触れる前に、現代のオプション市場がどのように形成されたのか、他の金融商品と比較の中でのオプションの立ち位置を整理します。

まずはオプションに限らない金融全般の歴史の概略です。

金融史概略

金融の起源は古代にさかのぼります。

  • 古代

    メソポタミアの時代にはすでに金利を用いた貸借が存在していました。古代ローマでは、株式の原型となる取引も行われていました。

  • 中世

    中世のイタリアでは、現代の銀行業の基礎が築かれました。世界で初めて銀行の小切手や手形が使用され、国際取引が拡大しました。

  • 17世紀

    17世紀のオランダでアムステルダム証券取引所の創設されました。初の公開市場が形成され、東インド会社の株式が取引されました。

  • 19世紀

    19世紀の産業革命の中で、銀行と証券市場が発展しました。鉄道や工場などへの投資が増加し、新しい金融商品や取引方法が開発されました。

  • 20世紀

    20世紀は世界大戦に加え、大恐慌、オイルショックなどの金融危機を経験しました。金融危機の度に金融市場の規制が強化され構造の変化につながりました。

  • 21世紀

    インターネットやコンピュータのテクノロジーにより、世界中でリアルタイムに取引が行えるようになりました。新興国でも市場が開設され取引がなされるようになりました。

大きな流れとして、金融は利子のある金銭の貸借があり、銀行が生まれ、証券業が発展しました。では、オプションはどのような経緯を辿ってきたのでしょうか。オプション取引の歴史も古代ギリシャにさかのぼります。

オプションの歴史

  • 古代ギリシャ(紀元前6世紀)

    哲学者タレスはオリーブの収穫権を買い取り、収穫時期にそれらの権利を利益を上げて売却したとされています。これがオプション取引の初期の記録とされています。

  • 中世ヨーロッパ(12-17世紀)

    中世の商人たちは価格変動のリスクから自らを守るために、先物契約やオプションのような契約を使い始めました。

  • 19世紀

    アメリカ合衆国における近代的なオプション市場の発展が始まりました。シカゴにて商品取引所が設立され、そこでの取引にオプションが使用され始めた。

  • 20世紀初頭

    オプション取引が盛んになり、主要な金融センターにおいてオプション取引に関連する規制と法的枠組みが整備され始めました。

  • 1973年

    ブラック・ショールズ・モデルが公開され、オプション価格付けに革新的な変化をもたらしました。同年にシカゴ・ボード・オプション・エクスチェンジ(CBOE)が開設され、組織化されたオプション取引の先駆けとなりました。

  • 1980年代以降

    グローバル化と電子取引の進展に伴い、オプション市場は急速に拡大しました。多くの新しい商品や戦略が導入され、市場の洗練が進みました。

現代のオプション取引を語る上で最も重要であるのは1973年です。オプション取引における転換点と考えられます。オプション取引は古代から存在していましたが、ブラックショールズモデル以前のオプション価格(プレミアム)の計算は、投資家個人の主観で行われていたものでした。1973年に起こった革新的な出来事は、オプションの価格(プレミアム)を合理的に計算できるようになったことです。それまで、理論立てた価格の計算方法がなくやりとりされていたオプションが、数理モデルで説明できるようになりました。ブラック・ショールズモデルにおける理論価格の計算です。

ブラック・ショールズ・モデルはアメリカで生まれました。ブラック・ショールズが生まれるまでの背景をアメリカの証券投資の歴史とともに振り返ります。

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